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なぜ? 中島翔哉のカタール移籍の理由【解説】

なぜ? 中島翔哉のカタール移籍の理由【解説】

中島翔哉選手のカタール・アルドゥハイル移籍報道に、一体なぜカタールなんだ、と多くの疑問も巻き起こりました。

カタールに移籍する理由として考えられるのは、①高騰する移籍金を支払えるのが中東マネーくらいなのではないか、あるいは、②その後のパリ・サンジェルマン移籍が約束されているのではないか、といった声もありました。

こうした憶測や希望的観測も含め、様々な意見が飛び交うなかで、移籍について沈黙してきた中島翔哉選手自身が、自分の言葉で、「なぜカタール移籍なのか」という理由を公式ブログで語ってくれました。

以下、中島翔哉選手自身の言葉を参考に、その理由について解説したいと思います。

第一志望がカタール

まず、ブログの文面から分かるのは、パリ・サンジェルマンありきでカタール移籍をしたのではなく、このカタールのアルドゥハイルというチームが第一志望だったのではないか、ということです。

それは、その後に判明した契約期間「4年半」という長期契約にも現れています。

そして、この契約は、代理人やポルティモネンセのクラブ側の意向ではなく、中島翔哉選手本人の意思が明確に反映されたものでした。

今回カタールのアル・ドゥハイルへ移籍することはポルティモネンセや代理人が決めたことではなく、自分の意思で決めました。

そして、それに同意し、移籍を実現させてくれたポルティモネンセと代理人、そして家族には心から感謝しています。

出典 : 中島翔哉オフィシャルブログ「皆さまにお知らせ」

昨年の移籍に関するインタビューでも、家族やクラブ、代理人に相談はするが、「最後に決めるのは僕自身」と語っている通り、カタール移籍も本人の意向が強い決定のようです。

それでは、一体なぜカタールを選んだのでしょうか。

中島翔哉選手は、移籍会見の席で移籍理由について、カタールと、そしてアルドゥハイルは「全てが魅力的だから決めた」とコメントしました。

また、実際に自分で二度ほどカタールに足を運び、チームの雰囲気やスタイル、方向性や環境などを吟味して、この地を移籍先に選ぶことが今の自分にとって最良の選択だと判断したとブログにあります。

このブログ記事にもあり、過去のインタビューや発言などを鑑みても、中島翔哉選手が大切にしていることは、「サッカーを楽しむこと」と「家族」です。

これが絶対的な判断の基軸として中島選手のなかに存在します。

もちろん、大きな舞台で試合するのも夢としてあり、また自分のスキルアップについては非常に重要視しています。

しかし、自身のサッカーのスキルアップは、目的であり、「結果として」到達するもので、まず揃えるべきは、先ほどの二点「サッカーを楽しむこと」、そして「家族」との穏やかな暮らしです。

この二点が揃っていれば、「結果として」自分の能力は上昇していくだろう、と。

そこで、恐らく移籍先としていくつかの選択肢があったと思いますが、その選択肢を比較し、現状、一番「サッカーを楽しむこと」が可能で、「家族」とも安心して暮らせるか、というのを基準に考え抜き、選んだのが、「カタール」であり、「アルドゥハイル」だったということなのでしょう。

その際、どうしても「有名リーグだから」、あるいは、「一般的にレベルが高いと言われているから」といった先入観やフィルターが邪魔をします。

一方、中島翔哉選手は、このフィルターをなるべく取り除き、自分の目で見て判断することが重要だと言います。

僕が移籍する時に大切にしていることは、お金や名声、リーグのレベルやチームの知名度ではなく、一般的な知名度やレベルを一度忘れて、自分の目で見て、自分の中でそのチームの強さを決め、自分のプレースタイルに合っているかどうかを見極めることです。

なぜなら、強いチームやとても有名なチームであってもその時の自分に合っていなければ意味がないですし、チームやリーグのステップアップが必ずしも自分にとってのステップアップになるわけではないと思っているからです。

出典 : 中島翔哉オフィシャルブログ「皆さまにお知らせ」

この「目」は、自分自身に対しても向けられたものなのでしょう。

今の自分が必要としているものは何か、守りたいことは何か。そして、その必要としているものを与えてくれるひとは誰か、伸ばしてくれる環境はどこか、ということを照らし合わせてみる。

もちろん、中島翔哉選手は、誰の意見も聞かない、と言っているわけではありません。

周囲に相談もしながら、しかし自分の目(感じること)を大切にし、最後は自分で決める。

自分で責任を持って決めるから後悔はしませんし、仮に何かを間違えたとしても、どこが違ったか、あとで判断ができます。

記事の終わりのほうで、中島選手は次のように語っています。

移籍を決めるまでに実際にカタールへ2度訪れ、チームのサッカースタイルと監督の考え、そしてカタールの雰囲気や環境などを肌で感じてきました。サッカーの面ではもちろんとても楽しそうだと思いましたし、カタールでも僕の奥さんとわんちゃんたちと不安なく幸せに楽しく暮らせると確信しています。

(中略)

僕はこれから先ずっとあくまでもサッカーは楽しいスポーツとしてやっていきたいと思っていますし、何よりも大切な家族と共に楽しい環境にいることが、自分の目指してるサッカーをすることに繋がると思います。

自分の意思で決めたことに対して後悔はしません。

出典 : 中島翔哉オフィシャルブログ「皆さまにお知らせ」

ずっとカタールなのか

気になるのは、中島翔哉選手が、このままずっとカタールにいるのかどうか、という点です。

契約期間は4年半です。

ただ、今回移籍先にカタールのアルドゥハイルを選んだのは、あくまで「今」の中島選手自身の状況と、挙がっていた様々な選択肢を考慮し、カタールがベストだと考えた、ということでしょう。

実際にブログでも、「移籍先のチームが今の自分にとって一番楽しそうだなと思えるプレースタイルであり、普段の生活でも楽しいと感じる環境であること」と、「今」という言葉を使用しています。

別に欧州主要リーグが絶対に嫌だという天邪鬼な選択でもなければ、カタールと心中し、カタールに骨を埋めるつもり、ということとも違うでしょう。

実際、元所属先のポルティモネンセのことも大好きだと語り、感謝し、またいつか戻ってきたいチームでもあると言います。

きっとアルドゥハイルとカタールのことも、中島選手は好きになることでしょう。

一方で、そのことと、「楽しいサッカー」を求めて、また別のチームに移籍することとは両立することだと思います。

中島翔哉選手は、以前、自分の性格を「わがまま」だと評していました。

一見すると、「わがまま」は、チームの輪を乱し、煙たがれることもあるのかもしれません。しかし、「わがまま」は、必ずしも悪いことばかりでもありません。

自分にとって本当に「楽しいサッカー」というのは、周囲も楽しく、ファンも楽しく、そして、そういうサッカーならきっと成績も残せるだろう、という哲学が、中島選手の根底にはあるのでしょう。

だから、いつまでカタールにいるのか、というのは正直分かりません。

ずっとカタールにいるかもしれないし、途中で移籍するのかもしれません。その都度、自分の「目」で判断していくのでしょう。

中島翔哉とイチローの共通点

この中島翔哉選手の価値観と共通点のあるアスリートに、メジャーリーグで数々の偉業を成し遂げてきたイチロー選手がいます。

イチロー選手が長年葛藤してきたのが、「自分のために野球をする」というものでした。イチローは、自分のために野球をし、そのことが「結果として」チームのためになる、と考えました。

しかし、周りは、「チームのために野球をする」ということを重視し、「自分のため」を突き進むイチローは、ときに自己中心的と批判され、孤立することもありました。

彼の数少ない尊敬する野球選手に、王貞治さんがいます。

あるとき、イチロー選手は王さんに、現役時代、「自分のために野球をした」のか「チームのために野球をした」のか、という質問をしました。

すると、王さんは言いました。

「自分のためだよ」

「チームのためにという人ほど、言い訳をすることが多いからね。自分のためにやることが、結果としてチームのためになる」

自分が「楽しい」と思うサッカーを目指す、わがままである、自分のためにプレーする。

それは、自分の「目」で見る、感性を大事にする、ということでもあり、決して簡単なことではありません。

内側に向かっては、自分の長所も、欠けている部分も直視しなければいけませんし、外側に向かっては先入観やフィルターを薄める必要があります。

そして、中島翔哉選手が、中島翔哉選手の「目」で、この地が「一番楽しいサッカーのできる環境」なのだと思って選んだのなら、その選択を応援したいと思います。

以上、ブログや会見、過去のインタビューを参考にまとめた、中島翔哉選手がカタールに移籍する理由【解説】でした。